燃料電池触媒の非白金化へ前進 ~高耐久性コバルト触媒の開発に成功~

【ポイント】

  • 14員環コバルト錯体を用いて燃料電池用非白金触媒を開発しました。
  • 開発したコバルト触媒は、燃料電池内の酸素還元反応、さらには水分解による水素生成反応においても、高い耐久性を発揮しました。
  • 原子?分子レベルのスケールでの詳細な構造解析を基に、高耐久?高活性非白金触媒の設計指針を示しました。

【概要説明】

熊本大学大学院先端科学研究部の大山順也准教授、同大学院自然科学教育部のZhiqing Feng大学院生(博士後期課程3年)、東京科学大学工学院の難波江裕太准教授、静岡大学の守谷誠准教授、旭化成らの共同研究グループは、燃料電池の酸素還元反応に対して耐久性の高い非白金触媒の開発に成功しました。

燃料電池の中でもプロトン交換膜を用いるタイプの燃料電池が自動車などで実用化されていますが、その触媒に高価で希少な白金が用いられており、これが燃料電池の普及拡大の妨げとなっています。この問題を解決するために非白金触媒の開発が進められていますが、非白金触媒は一般的に耐久性が低いという問題を抱えており、実用化への大きな障壁となっています。

本研究では、燃料電池の酸素還元反応に対して、14員環コバルト錯体を用いることによって、従来の鉄系触媒より耐久性が著しく高い触媒を開発することに成功しました。さらに、今回開発したコバルト触媒は水電解による水素発生反応に対しても高い耐久性を示しました。原子分解能電子顕微鏡観察、放射光分析、結晶構造解析、量子化学計算など様々な手法を用いた触媒解析によって、今回開発したコバルト触媒は活性点構造がコンパクトで且つ歪みが小さいために、反応中に活性点から金属が溶出しにくく、これが高い耐久性を示した要因であると明らかになりました。今後この知見を基にした触媒開発によって燃料電池触媒や水電解触媒の非白金化が進展すると期待されます。

本研究はJST GteX (JPMJGX23H0)、JST SPRING (JPMJSP2127)、NEDO、科学研究費助成事業(23H01762)の支援を受けて実施したものです。本研究成果は令和7年4月25日に科学雑誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載されました。

?【今後の展開】

本研究で耐久性の高いコバルト触媒を開発できただけでなく、耐久性向上の鍵となる構造について知見が得られました。これは次の触媒設計指針となる重要なものです。今後、この指針を基にして触媒構造の開発が進むことで、燃料電池の非白金化技術が進展していくと期待されます。


【論文情報】

論文名:Fourteen-Membered Macrocyclic Cobalt Complex Structure as a Potential Basis for Durable and Active Non-Platinum Group Metal Catalysts for Oxygen Reduction and Hydrogen Evolution Reaction

著者:Zhiqing Feng, Junya Ohyama, Soutaro Honda, Yasushi Iwata, Keisuke Awaya, Masato Machida, Masayuki Tsushida, Ryota Goto, Takeo Ichihara, Makoto Moriya, Yuta Nabae

掲載誌:Journal of the American Chemical Society

doi:10.1021/jacs.5c01306

URL:https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/jacs.5c01306

【詳細】 プレスリリース(PDF0.54KB)



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